絵画芸術
(画家のアトリエ)

Allegory of Painting
ウィーン(オーストリア)
美術史美術館


1666年頃
120×100cm


この作品を3Dで観ると…
「空谷の跫音」
2003年9月10日にこの作品が日本にやって来ると知った私の心境です。
「栄光のオランダ・フランドル絵画」展

フェルメールにせよどんな画家の絵でも本物を観ないとその作品の持つ本当の魅力は
分からないものですが、ことこの「絵画芸術」に関してはその方程式がまさに見事に
当てはまります。じかに観て感じてこの絵の素晴らしさが見えてきます。
確かに、画集やwebサイトで観ていても素晴しさは伝わってきます。
(それほどこの作品の完成度は高く、優れていることの証明になります。)
実際に観る前からこの絵に対する想いはかなりのものがありました。
その「想い」が招いた一連の「喜怒哀楽」は過去の駄文に委ねるとします。

さて絵を観ていきましょう。
月桂冠をいただきトランペット持ち、左手には本(トゥキュディデス)を抱えている女性は
歴史のミューズ(女神)、クレオ(クレイオー)を現していると言われています。
    
これらは1644年にオランダ語で出版されたチェーザレ・リーパの『イコノロギア』にある記述です。
手前の机の上にある石膏のマスクは喜劇の女神タレイアを、本は抒情詩のエウテルベー、
讃歌のポリュームニアを現すそうです。

手前に居る画家は当時の服装より古風ないでたちでキャンバスに向かって絵を描いています。
今で言えば古風な晴れ着で着飾っているのと同じです。黒いひだひだの陰影の表現の見事さなど是非、
注目してご覧になってみてください。 
右手にあてている見慣れない棒は腕鎮(モールスティック)というもので、
画面に手をつかずに細部を描き込むための手首の支持用具だそうです。
長時間一定に腕を保つ画家の繊細な手を腱鞘炎から守るために用いるそうです。
実際絵の前に立つと足元も気になります。赤いストッキングのような色がとても印象に残ります。

手前のカーテンを止めている椅子の大きさから測ると、画家、机、
女性そして壁の地図とかなり奥行きがあるのが分かります。
床の白黒のタイルと共にこれもまた注目点です。

人物以外にも見逃してならないのは天井から釣り下がったシャンデリアです。
言い尽くされてはいるとは思いますがここに輝く光の粒々は真骨頂です。
    もっと細かい画像はこちら。粒々見えます!

さらに、一番奥の壁にかかる地図。これまでにも地図が描きこまれた作品は何枚かありましたが
この地図ほど微細且つ巧みに描かれているものはありません。

背後の壁面の大部分はやはり大きな壁掛地図によって占められているが、
フェルメールの実に巧み写実の妙技によって、地図の表面の凹凸やかすかな折り目を
浮き彫りにしている光の清綴な描出には驚嘆せざるをえない。
 地図の上部の表題は、天井からつるされた金属性の燭台のかげになっていてみえない
ところもあるが、NOVA XVII PROV 〔lN〕CIARUM 〔GERMANIAE IN〕FERI 〔O〕 RIS DESCRIPTIO/
ET ACCURATA EARUNDEM …… DE NO〔VO〕 EM 〔EN〕D〔ATA〕 ……
REC 〔TISS〕IME EDIT〔A P〕ER NICOLAUM PISCATOREM
〔低地ゲルマニア(ネーデルランド)17州新訂精図)〕と判読される。
 また壁掛地図の右上のところに、ネーデルラント連邦17州を象徴する女性を中心に、トリトン、
ネプチューンなどの神話的人物が取り巻く大きな飾り枠のなかには、
GERMANlA INFERIOR DE NOVA EMENDATA ET EDIT〔A P〕ER NICOLAUM IOANNIS PISCATOREM
(『ピスカトル作、新訂低地ゲルマニア図』)と記されているが、Nicolaus Piscatorは、
ホンディウス家やブラウ家などとともに、17世紀のオランダの代表的な地図作製者であり出版者でもあった
、フィッセル家の二代目のニコラウス・ヤンスゾーン・フィッセルのラテン名である。
ヨーロッパでは都市図に対する関心が高く、需要も多かったと見え、
鳥瞰図や景観図を含めて多数の都市図が早くから刊行されている。
 フェルメールがこの一七州図の壁掛地図の全図を画面に大きく採り入れたのは、
他の室内図の場含と同じく室内壁面の単調さを避けるためであったばかりでなく、
聖ルカ組合のために描かれたこの作品は、オランダの独立によってネーデルラントは南北に分断されたが
、聖ルカ組合の画家たちの間にはこのような政治的境界が存在しないことを示したものと思われる。
したがって画面の画家が、分離以前の16世紀のブルゴーニュ風の衣裳をまとい、
背後にまだ南北の間の国境が引かれていないフィッセルの地図を用いたのも、スペインの支配を離れて、
再び全ネーデルラントの統一の日の来ることを願ったものと思われる。
またこの作品は「絵画芸術」と呼ばれるように、歴史の女神クレイオを登場させることによって、
絵画のもつ時代を超えた栄光と名声の歴史的意義を示したのであろう。
『古地図の博物誌』織田武雄著 古今書院より

この作品には一度ふられた事があります。それが「縁」の始まりだったのかもしれません。
まさかウィーンでふられて対面できなかった作品に上野で逢えるなどと誰が想像したでしょう。
それにしてもあの時は辛かった・・・こちら。1998(平成10年)7月27日の出来事でした。
その後、2001年3月にNYメトロポリタン美術館で開催された
「Vermeer & the Delft school」(フェルメールとデルフト派」展)で初めて観ました。
そして2003年2月ー5月にスペインプラド美術館で開催された
「Vermeer y el interior holandes」(「Vermeer and the Dutch Interior」)で再会を果たしました。
二つの展覧会で会場の「とり」を飾っていたのがこの「絵画芸術」でした。

また来日した「絵画芸術」を「栄光のオランダ・フランドル絵画」展でまた観ることができました。
(2004/4/15) 

これからご覧になる皆さん。想像を遥かに超えた美しさを持っている作品です。

フェルメールが生涯手元に置き、彼が亡くなった後も妻カタリーナがこの絵だけは
手放そうとしなかった訳もきっと理解できると思います。


こちらはレンブラントの「アトリエの画家」という作品です。
  
Rembrandt van Rijn(1606-1669)The Artist in his Studio 1626-28 Museum of Fine Arts, Boston

ファン・ミーリスの「画家のアトリエ」です。(1655-57頃製作、ゲメルデ・ガレリー旧蔵、ドレスデン)
残念ながら第二次世界大戦で破壊されてしまったそうです。
                          

                 Frans van Mieris (1635-1681) The Painter's Studio c.1655-57
こちらのファン・ミーリスの貴重な画像はtoshi館長からお借りしました。


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この絵がジャケットの
CDがあります。
モーツァルト
ウィーン弦楽四重奏曲 全曲


ベートーヴェン
交響曲第6番「田園」

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